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伏拝の盆踊り

8月14日の夜、伏拝(ふしおがみ)地区の盆踊りにも少しだけ立ち寄れた。今年の春に熊野古道を歩いた時、伏拝茶屋で地元の女性たちに勧めてもらった盆踊り。松本さんたち、集まっておられるだろうか。(昭和52年の記録だが、伏拝地区は100軒のうち松本姓が48軒、榎本姓が22軒だったという)

熊野本宮大社から車で少し山を登っていくと、棚田や茶畑が広がっている。何度来ても、のどかでいいところ。

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盆踊り会場の公民館を確認しておこうと、集落の細い道をうろうろ。たどり着いた公民館の庭には、あめ玉みたいな提灯がぶらさがっていた。

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下の写真は、会場となる公民館を少し上の道から撮影したもの。場所をチェックできたので、我々はひとまず退散。

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夜9時頃、前をゆく鹿の親子三頭連れをよけながら、再び山道をのぼっていく。会場に着くと提灯にぼんやりと灯りがともり、賑やかな声があたりに響いていた。
びっくりしたのが子どもの多さ! 伏拝にはもう子どもはいないはずなのに、降って湧いたようにわらわらと。聞けば、まちから帰省してきた人のお子たちだとか。
夏休みに、こんなに風情のある山里で盆踊りができる子どもは幸福だなぁ。井上陽水の「少年時代」がうっとりと頭をめぐったが、「イヤ、ドッコイショ」の声にすぐかき消された。

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音頭取りは、伏拝盆踊り保存会会長の松本喜代志さん、85歳。この曲は「五尺いよこ」という曲の終り部分だ。いよこ、とは手ぬぐいやタスキのことらしく、棒を持って踊る。「そこじゃい」という合いの手が絶妙で、いつまでも耳残り…。(そこじゃい)

音頭取りの松本喜代志さん

音頭取りの松本喜代志さん

アーイヨオコノナー アーナニガサテーノー
橋のいよこの下なる (そこじゃい)
橋の下なる いや鵜の鳥は
アーイヨオコノナー アーナニガサテーノー
鮎をいよこのくわえて (そこじゃい)
鮎をくわえて いや瀬をのぼる
アーイヨオコノナー アーナニガサテーノー

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伏拝の盆踊りには道具を使わない手踊り、日の丸扇子を使う扇踊り、棒を使うホロ踊りがあり、起源は江戸時代の中頃だという。
松本さんに「後継者はおられますか」と尋ねると「今は奈良に住んでいる人が今年から練習してくれてます。23日の地蔵盆にも練習に帰って来てくれるって言うんで楽しみにしてるんです」と、とっても嬉しそう。味わい深い古老の歌声に合わせて、笑いながら踊る人々。こんな夜が日本にまだあることが、しみじみ嬉しくなるような。

伏拝を歩いた時の記事はこちら