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平治の滝

平治川は本宮町最北端の山中にある。現在は無住の地だが、昭和48年に最後の住民たちが集団移住するまで集落があったそうだ。地名から察せられるように、ここにも平家の落人伝説があり、落人たちが武器を用いて踊ったという「なぎなた踊り」が今に伝わっている。

川沿いに林道が開かれるまでは陸の孤島のような寒村で、熊野地方の人たちも会話の途中で話が遠くへ飛んでわけがわからなくなった時に「話は平治川や」と言ったとか。
そんなことを言い合う人たちも、平地人から見ればけっこう奥地に住んでおられたと思うのだが、奥には奥があるということだ。

林道を遡ること、数十分。落石がゴロゴロ転がる山道には慣れたものの、タイヤがパンクしたら怖いのでゆっくり進む。このまま車で行っていいものか、カーブを曲がるたびに一瞬考えてしまうくらい荒れた道。「もうあかんかも」と思ったところで、ようやく古びた案内板が目に留まった。

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ここに車を停めて歩くのだが、危険な感じはまだ続く。滝口に至る歩道には鉄板がいくつか渡してある。これって、かなり錆びているように見えるのだが大丈夫なのだろうか。

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……大丈夫だった。

ほっとして森の音を録る。廃村で聴くヒグラシと鳥の声、川のせせらぎ。

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植林に埋もれた集落跡をしばらく歩いて滝口に到着。
写真ではうまく撮れなかったが滝は二段で、案内板によると高さは50メートルらしい。

滝の主は大蛇だといわれる。大蛇が嫌うのは梅干しと谷を汚すことで、遠足に来た小学生が梅干しの種を滝壺に投げ込んだら、その周りだけ大雨になったとか。
雨を降らせる大蛇なので、昔は滝のそばで雨乞い踊りもしたそうだ。

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滝を見上げながら、録った音。

季節柄か水量は少ないものの、神秘的な気配を漂わせている優美な滝。大蛇と娘が恋をしたという伝説も、さもありそうな。

平治川の大蛇(加工写真)のコピー

熊野の伝説「平治川の滝のぬし」はこちら