熊野に初雪が降った日

12月の後半、防寒対策をしっかりして2泊3日の熊野取材に向かった。

初日に目指したのは敷屋(しきや)という集落。
廃校を利用した施設、共育学舎さんで佐々木康年さんと待ち合わせをしていたのだ。

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熊野川沿いの細い県道を下って敷屋に到着。廃校もすぐにわかった。
赤い屋根の木造校舎が山を背にしてひっそりと。熊野地方の廃校はいくつか見てきたが、閉鎖されて入り口にロープが張られていたりする。ここは活用されているので、息づいているというか、生きている感じ。こういう建物が使われていると、集落全体が温かい感じがしてほっとする。

しばらくして佐々木さんが来てくださった。

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佐々木康年さん

佐々木さんは敷屋にお住まいのアイターン。

出会ったのはこの日が二度目で、はじめましては今年の5月。敷屋の隣、高山(たかやま)の「熊野出会いの里」に泊めていただいた時のことだ。宴会の席でビールやら焼酎やらを呑みながら、私の話を熱心に聞いてくださる珍しい方がいて、それが佐々木さんだった。(「お年寄りの話を聞き書きしたい」なんていう話を面白がる方もめったにいない)

廃校ではカフェも営業されているのだが、その日はあいにく定休日。でも「お茶ぐらい出しますよ」とスタッフの方が優しく言ってくださった。
暖炉のそばでおいしいコーヒーをいただきながらあれこれ話していたら、佐々木さんもお一人で聞き書きの活動をされていることを知って驚く。自分以外にまだ会ったことがなかったので。

その後、高山の「みんなのカフェ」(「熊野出会いの里」の中)に移動。ラーメンをいただく。

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テラスからは熊野川が一望できた。雨が降りだして山々には霧がかかり、いかにも熊野らしい。
これまで熊野川流域の集落を取材する余裕がなかったのだが、このへんに来るとやたらとディープでガシッと心をつかまれた感がある。熊野川を中心に、脈々と営まれてきた暮らしも知りたい。熊野川と熊野の人は、どれほど深くつながってきたのだろう。

ダムができ、水量が減って、川と人との関係も疎遠になっていったようだ。しかし老人たちはまだ、かつての記憶を持っているはず。

帰り際、すっかり雨もあがって青空が見えた。(山間部の天気は信じられないくらいにころころと変わった)

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熊野川

翌日、熊野に初雪が降った。国道からそれて、大瀬に立ち寄る。
実は先日から、大瀬のおばあさんに電話をしているのだがつながらなくて気になっている。
携帯からもういちど電話をしたけれど、まだお留守。お元気ならいいのだけれど。

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大瀬

 

投稿日:2013年12月27日
カテゴリー:みちとおと取材記
文:北浦雅子