小栗判官

小栗判官(おぐりはんがん)は、京都の二条大納言、兼家のひとり息子で評判の美青年。ある時、深泥ヶ池(みぞろがいけ)を通りかかった小栗は、美女に化けた大蛇と出会い、うっかり恋に落ちてしもた。兼家はたいそう怒り、小栗を常陸の国 […]

百夜月

北山川の岸辺に百夜月(ももよづき)という小さな里がある。そこには光月山紅梅寺という古いお寺があって、若くて美しい尼さんが仏さんを拝みながら静かに暮らしていたそうや。 そんな尼さんの姿を、川の向こう岸からいつも見つめていた […]

狐の火

近露の「かみや」という家で、自分の敷地に稲荷さんを建てて祀った日のこと。 夜になると箸折峠から、ずっと下の出口の谷というあたりまで、 火がずらっと並んで見えたという。 村の人たちは、「お稲荷さんの使い火ではないか」と言っ […]

三体月

ある時、ひとりの猟師が山で大きなイノシシを見つけたんや。 こんな大きな獲物を逃してはならんと、気合いを入れて矢をふりしぼった。 矢はイノシシの腹を見事に射抜いたが、死なん。イノシシはポタポタと血を流しながら山の奥へ走って […]

牛鬼

牛鬼というのはな、頭が鬼で、首から下が牛みたいな恰好をしているんで、牛鬼というんやと。 川が淵んなっとる処によく牛鬼が出るというんで、昔は暮れ方んなると怖うて淵のあるとこ通らなんだの。牛鬼見ると何やらよくないことあるいう […]

ガシランボ

夏は川にいてゴウライと呼ばれ、冬は山に入ってガシランボと呼ばれる。 体に松やにをぬってな。 私の祖父が椎茸を栽培している木の上を、小っちゃなガシランボが跳んでいるのを見たという。 小っさい子どもみたいなやつだったという。 […]

ひとつダタラと狼

せの川付近の庄屋が夜遅く帰って来た時に、狼がいでて庄屋の着物のすそをくわえてひっぱるね。気持悪いけど何処へ行くかしらんと思って、ついて行ったわけなんです。 そしたら、ほら穴があってそこに連れ込んで行くと、こりゃもうこの世 […]

兵生の松若

安堵山(あんどさん)の麓にあった兵生(ひょうぜ)っていう村での話や。谷間に小さな家々が散らばるところでな、村の衆は助け合いながらつつましく暮らしてた。 ある日のこと、山にこだまするほどの産声をあげながら、大きな男の子が産 […]

清姫と安珍

千年あまり昔のこと。富田川のほとりに、真砂(まなご)っていう小さな里があった。まぁ今でもあるけどな。里をおさめていたのは真砂家の当主で、名前は清重。ある時、清重は黒い大蛇に呑みこまれそうになってる白い蛇を見つけた。ほいて […]

山の神

この奥に道湯川の集落跡にのぼる道がある。五本松へ上って、下っていく道やけどね。 そこで山仕事しとった。重ちゃんやけどね。多禰重次(たねしげじ)というんや、同級生でね。 いまは、もう死んでしまいました。 そしたら、青い着物 […]

十丈峠のダル

ダルは飢えた人のあるところで会うという。 おばやんのいとこね、富里から今の十丈へ来たらね、腹へったゆうで、 「めし食え」ちゅうて、やったら、わっぱへ四杯も食ったと。 わっぱゆうたらおひつみたいなものやな。 三合は入るな。 […]

平治川の滝のぬし

道湯川と平治川は峠をこえた一番近い里で、この辺は美人の生まれる里であった。平治川はもちろん平家方の公家・貴族の落人で、代々気品のある美人が産まれた。 ある年、とりわけ美しい女の子がいた。この子もみんなと一緒にお滝へ参拝し […]

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熊野の伝説

熊野の伝説

かつて森にはダルや牛鬼、一本ダタラがひそんでいました。そして天狗やオオカミ、山の神も確かにいたのです。
語り継がれる伝説は、森と共生してきた山の民が生んだ物語です。