⑪ 写真家と印刷のプロが生んだ色・熊野グレイ

京都の印刷会社・サンエムカラーさんに無事入稿することができた。その後、ほっとする間もなく割引予約販売の対応や、口座の開設、書店さん向けの書類作成など雑務に追われている。こちらがあたふたしている間に、サンエムカラーさんのほうは素晴らしい記事を書いておられた。これがもう、わかりやすいし面白い。
すごくないですか、これ。↓ (こういう情報はなかなか得難いですよ)

印刷職人のしごとば・一冊の写真集が完成するまで②

こんなふうに書いてくださるとは、思いもよらず・・。
実は我々がサンエムカラーさんに印刷をお願いしたのは、卓越した技術に惹かれたのはもちろんのこと、自分たちにとって貴重な学びになると考えたからだ。一流と言われるプロフェッショナルと協働することでしか、得られない類の学び。それはきっと、今後の仕事に役立つはずだ。

下の写真はサンエムさんのブログにあった「3回目で仕上がった色校正」。照井さん、硲さん、北浦にそれぞれ、こんなふうに筒状で送ってくれた。

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タテ64㎝ヨコ94㎝ほどの紙をひらいて見ると、
なんとも美しく、魅惑的なグレイ!  この絶妙な色味を私は熊野グレイと名付けたい。

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さっそく3人でスカイプにログインして「すごくいいですね」と喜びあう。

「さすが、サンエムさん。 暗いところから明るいところまでしっかり階調が出ていますね」とデザイナーの硲さん。

「月の写真なんかも、僕が何べん理想に近づけようとしても出なかった色が出てる。こんなところまで出せるんですね」と写真家の照井さんもうっとりと言う。

感動を伝えるやりとりが長々と続いたあと、「ぼくが一ヶ所リクエストしたいのは、フンドシの透け感ですね。もうちょっとだけフンドシが見えるような微妙な透け感がほしい」と照井さんが言って、「あ、ここですか?」と私が指をさす。

サンエムカラーの前川さん(アートブック・ディレクター)に伝えたらすむ話だが、「サンエムさんの、あの校正室で一回ぐらい校正してみたいですよね」と硲さんが言って「わかる、わかる」と照井さんと私がうなずいた。せっかくの学びの機会を逃したらもったいないし、なんていうか、そういうこともやってみたい。
東京や和歌山からの交通費は痛いが、ワークショップを受けにいくようなつもりで京都に出向くことに決めた。我々がご相談したいのは、フンドシの透け感である。

ところで最終の仕様と印刷代金をまだ公開していなかった。「結局おいくら?」 と思っておられる方(いないかな?)のために書かせていただくと、

仕様/224×232、112ページ、用紙ガルバスCoC、小口印刷(背部分)を追加、コデックス装
500冊 1,640,412円(税込)

当初の予算150万は少々オーバーしたが、途中の迷走を経て、現実的かつ理想的なところに着地できたと満足している。たびたび見積もりをお願いして、前川さんには申し訳なかったが、いつも快く対応・誘導をしていただき感謝申し上げます。

という経緯で、照井壮平写真集『狼煙』の定価は6,400円(税別)となり、今後の課題は販売である。硲さんがデザインしてくれたリーフレットも完成。

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一年かけて、ようやくここまでたどり着けた。
これまでブログを読んでくださっていた皆様には感謝しているし、少しでもお安くご購入いただきたい。そう考えて50冊限定・5,500円(税別)という割引期間を設けたところ、facebookの告知から5日ほどで売り切れてしまった。一体あの、ドヤドヤ祭りのような現象はなんだったのか。今後の売れ行きに期待していいのか、いやアカンのか。

まもなく定価6,400円(税別)での販売を開始しますので、何卒よろしくお願いいたします。

 

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投稿日:2017年9月9日
カテゴリー:みちとおと取材記熊野を編む
文:北浦雅子