「霧の郷 たかはら」から見た雲海

その日、我々が泊まったのは古道沿いの集落にある「霧の郷 たかはら」。これまで何度か泊まらせてもらったのだが、とても素敵な宿なので友人たちにもぜひ紹介したかった。

館内に入るとオーナーの小竹(しの)さんが賑やかに出迎えてくれて、相変わらずというか、ますますパワーアップしている感じ。「ただものじゃないで」と事前に説明していたので、彼女たちもオーナーに会うのを楽しみにしていたはずだ。期待通りのインパクトで、よかった。

案内してもらった部屋は、広々とした和室だった。テラスに立って、まずは果無(はてなし)山脈にみとれる。「ハテナシって、なんて詩心のある名だろう」と毎回毎回、飽きずに思いをめぐらす。誰が名付けたのか知らないけど、おそらくは山の民。「夜の闇の怖さを知っていた人たち」だと思うのだ。

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「暮れていく空のグラデーションを見よう」と相談していたので、慌ただしくお風呂に入ってからダイニングへ。テラスの薪ストーブにあたりながら、生ビールを片手に移ろう空の色を見るという至福。その日は薄っぺらい三日月だったので、星もたくさん見ることができた。食事もやっぱり丁寧でおいしかったし、お酒もね。
びっくりしたのは、小竹さんがフラメンコギターを弾いてくださったこと。やっぱり、ただものじゃなかった。

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ここでは一人旅の宿泊客に出会うことも多いが、その日も東京から来た男性が一人で宿泊されていた。「キミは働きすぎだから有給休暇をとりなさい」と上司に言われて、熊野古道を歩くことにしたのだと言う。都会から来られた方に熊野を味わってもらえるのは、県民のハシクレとしてもたいへん嬉しい。魂再生の地なのだから、癒されて帰ってほしいと思う。

部屋に戻って、タロットカードで遊んでから就寝。

翌朝、6時にアラームが鳴った。前に来た時は飲み過ぎて、雲海タイムに起きることができなかったのだが、今回はボトルも1本にしたし、なんとか起きられた。這うようにして障子を開けたらきっちり雲海。絵にかいたような雲海! 毎日見られるわけではないので、ラッキーだ。

三人で寒さに耐えながらずっと見ていたら、「雲海、多すぎるんよ…」と友人がつぶやいた。
なによそれ。

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〈つづく〉

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投稿日:2014年11月30日
カテゴリー:みちとおと取材記
文:北浦雅子