熊野本宮大社 湯登神事〈3〉

夕暮れ、熊野本宮大社の旧社地、大斎原(おおゆのはら)で神事が行われるという。
大鳥居の前で、待ちくたびれてぐったりしていたら、かすかに太鼓の音が聴こえてきた。雑談と足音と、鼻歌のようにくちずさむ歌が近づいてくる。なんてまったりと幻想的な…。

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高張提灯を先頭に宮司さん、稚児、付人、氏子総代が御幸道(旧参道)を行く。そして石祠の前で宮司さんが祝詞をあげたあと、またしても、稚児たちによる八撥の舞。「さがりやそー、あがりやそー」の声と太鼓に合わせてくるくるまわる。

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これが終わる頃には、日も落ちかけてあたりは薄紫色。そろそろ神々の時間だ。
一行は再び歩きだす。

山に向かって10分ほど歩いたところで、前をゆく提灯の灯りが止まった。
最後の神事は、熊野の神が最初に降臨したといわれる真名井社で執り行う。
石積みの井戸のまわりに、灯りがともされていた。この灯りがないと、真っ暗闇だろう。
ここでも、同様の儀式が行われ、丸一日かけた湯登神事はようやく終わりを迎えた。
湯の峯の湯と、本宮大社の強い結びつきを感じた日。

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帰宅してから調べたら、神歌の歌詞が本宮町史に記録されていた。意味は謎。

ならの  葉音  こがねの  鈴こそ ならし みかぐら やよありや そうやそ そうやそありや そうやそう            しらまゆみ、しらまゆみ  やがていのりの門こそ

私はもう音の編集作業で聴きすぎて、頭の中で神歌のぐるぐるが止まらない。すでに歌えるし。

 

 

投稿日:2013年4月22日
カテゴリー:みちとおと取材記
文:北浦雅子