⑤ 中辺路町近露を編む

続いての撮影場所は熊野古道・中辺路沿いの集落・近露(ちかつゆ)。
協力をお願いしたのは、カフェ朴(ぼく)のオーナー・中峯幸美さんと子どもたちだ。中峯さんと出会ったのは約3年前で「みちとおと」のウェブサイト制作に着手した頃のこと。当時、私は地域の方々から協力を得たくても説明がうまくできず、泥舟で漕ぎ出してしまったような不安な気持ちがいっぱいで・・・。中峯さんは、そんな厄介な時期の私にあたたかく接してくださった熊野びとのお一人だ。(なので近露は「みちとおと」の旅の起点なんです)

久しぶりにお会いした中峯さんには女の子が生まれ、二人の子どものお母さんになっていた。同行してくれたのは、もうすぐ6歳になるというイガグリくんと、もうすぐ2歳になるというドングリちゃん。(ともに仮名)

熊野の木と子どもの写真が撮れたらいいなと思っていたので、中峯さんおすすめの木を教えてもらう。

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最初に案内してもらったのは、大きなキンモクセイ。「花が咲いていた時はすごいきれいだったんです。こんな大きなキンモクセイ、珍しくないですか」と中峯さん。
「ほんまやね」と言いながら照井さんが撮影していると、イガグリくんが「ぼくも写真とる!」とせがんでカメラを貸してもらってご満悦の図。

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坂の上から集落を見渡すと、真ん中あたりにこんもりと大きな木が見えた。
次はあそこに行ってみようよ。

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日当たりの良い高台で枝を広げる大きな木。
「これなんの木やろ。今度おっちゃんに聞いてみよ」と中峯さんが言う。「おっちゃんって?」と聞くと「ここの地主さん」とのこと。

このあたりは、城ノ峰(じょうのみね)と呼ばれているとか。
見晴らしのよい所なので、その昔に山城でもあったかな。

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そして朴(ほお)の木を見に行く。照井さんが木の根元に立って撮影を始めた。

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「わたし、この木が大好きで、うちの店の名もこの木からとったんです。下から見ると葉っぱもきれいなんですよねぇ」
ゆったりした表情で中峯さんも見上げた。
近露はすごく美しい山里だと感じていたけれど、そこには中峯さんが醸し出す気配も重なっていたんだなとふと思う。山は自然だけで美しいけれど、里は自然と人の美しさが溶け合っていると思うから。

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「はやくオークワに行ってドラゴンボールゲームしたい」と言うイガグリくんをなだめつつ、最後に向かったのは一方杉だ。(ちなみにオークワとは和歌山県全域にあるチェーンスーパーで、ここからは車で片道40分ぐらい)

一方杉は継桜王子境内にそびえる樹齢800年以上と言われる巨木。明治の神社合祀令の際、南方熊楠が伐採に反対してかろうじて残った数本だ。(30本ぐらいはこの時に伐られた)

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下の写真は老樹の根元にちょこんと座るキジムナーのようなイガグリくん。

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私はこの木が好きなので、お願いして木のそばに行ってもらった。イガグリくんの頭の中は、ドラゴンボールゲームのことでいっぱいなのに、すみません。

よちよち歩きの妹が可愛くてたまらなさそうなお兄ちゃん。何かと手を貸したり誘ったりするのに、可憐な妹は「いやや」とばっさり拒否。でも兄はめげないし懲りない。そんな切ない場面を、この数時間で幾度となく見た。

イガグリくんとドングリちゃんは、熊野の山里の子ども。

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【取材途中に立ち寄った店】
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小鳥の樹   和歌山県田辺市中辺路町近露1129  TEL  0739-65-0614

近露の里の観光交流施設「かめや」で営業している洋食屋さん。シェフは東京からのアイターンです。紀州うめ鶏や魚、ジビエを使った珍しいハンバーグもいただけます。写真はイノシシ肉100パーセントのジビエハンバーグで、ライスとスープが付いて900円。ぜんぜんイノシシ臭くないし!! しっかりしたお肉の味が美味でした。卵や乳製品を避け、自家製の米粉やカツオだしを使っているそうです。小鳥の樹のFacebookページはこちら

(*この記事の写真は北浦が撮影したものです)

【緊急告知】

11月3日の文化の日に、毎年恒例の「近野まるかじり体験」が近露〜野中(和歌山県田辺市中辺路町)で開催されますよ。
野中の獅子舞、もちなげ、ジビエ料理のフードコート、地元野菜や加工品、お寿司の販売などがあります。詳しくはこちらのFacebookページでご確認ください。

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投稿日:2016年10月31日
カテゴリー:みちとおと取材記熊野を編む
文:北浦雅子