兵生の取材に同行したひろのさんが、松若の絵を描いてくれました。松若が腰掛けている石組みは、カマドの跡。おそらく数十年前まで家が建っていたはずですが、今は植林された杉に埋もれています。この絵を見ていると、塩をもらいに里へおりて来た松若が、途方に暮れているようにも見えるのです。
中辺路町兵生〈3〉松若と杉
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兵生の取材に同行したひろのさんが、松若の絵を描いてくれました。松若が腰掛けている石組みは、カマドの跡。おそらく数十年前まで家が建っていたはずですが、今は植林された杉に埋もれています。この絵を見ていると、塩をもらいに里へおりて来た松若が、途方に暮れているようにも見えるのです。
富田川の最上流部に鎮座する春日神社は、兵生の里の氏神さま。私たちが訪れたときは、初夏の明るい陽射しを浴びていましたが、夜はどれほど深い闇になるのだろうと想像するとぞくっとしました。私はかつて一度だけ山中で闇を体験しましたが、目を開いても閉じても全く変わらなくて驚きました。「兵生の松若」は山の闇を知る人々の中で生まれ、受け継がれてきた物語だと思います。
兵生(ひょうぜ)の松若伝説に惹かれて、廃村を訪ねました。私は廃村や廃道、廃墟が好きなのですが、それはたぶん、子どもの時に観た「あなたの知らない世界」というテレビ番組の影響だと思われます。山中を歩いていると、四次元の迷路にはまって地図にない集落に紛れ込んでしまう。それは過去に存在した村でした。という不思議な体験の再現ドラマにやられて、私の妄想癖に拍車がかかった、と思っています。(おとなになってから、お酒の席で同じことを話す女性に出会ってびっくりしたことがありました)