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2013年6月6日

中辺路町高原〈3〉霧の郷たかはら

里のみち

熊野の道は里を結びながら、山中を迷路のようにめぐっています。古老たちの語りや歌、伝説に導かれながら行く里の道。訪ねたのは大瀬(おおぜ)・高原(たかはら)の集落と、兵生(ひょうぜ)の廃村です。

その日、私たちは初めて高原に泊まることができた。
私は何度か来ているが、竹内さんを案内するのは初めてだ。あの景色を見たらきっと感動するはず、と内心わくわくしながらのドライブ。

途中、あまりに何もないので、この上に集落なんぞあるのかと不安になるのも当たり前。
「ちょっと、道まちがえたんとちがう?」と心細げな声を聞きながら、山道を抜ける。
と、ぽっかり広がる絶景ポイント。

どうよ?

高原の棚田

…すごいわ、ここ。

きっちり感動していただいたので、しばし撮影タイム。ふと棚田を見下ろすと、一面に水がはられていた。田植の準備が始まっているようだ。
坂道を下って水車を見に行く。あれ? ……まわってる。

高原の棚田2高原の棚田3

実は4月に水車の音を録った時、ハグルマが半周ぐらいまわっては戻り、まわっては戻りの運動を繰り返していて、ぐるっと回転していなかったのだ。
確かあの時「水車って、こんなふうに半回転で動くんですねぇ。知らなかった」とひろのさんが感心したように言って、私も「えっと、そぅ、だったかな?」と首をかしげて話をうやむやにした。
録りなおしである。
シーズン到来で気合いの入った水車の音と、やる気なさげな蛙の声。

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夕暮れ時に、今夜の宿「霧の郷たかはら」に到着。館内は、そこはかとなく外国っぽい。
スペイン?(行ったことないけど)
ダイニングからも部屋からも、連なる山並みが一望できた。少しずつ暮れていく空と、夕日に染まる棚田。刻々と変化する自然の色にみとれてしまう。

「霧のさと たはから」の客室

「霧のさと たはから」の客室

食事も心がこもっていておいしかったし、オーナーの小竹(しの)さんもホスピタリティ精神に満ち満ちた楽しい方で、さりげない気配りをいろいろとしてくださった。

あまりに居心地がよかったので、夕食が終わったあともダイニングに居座ってしまった。
ご夫婦で来られていた宿泊客と話が盛り上がり、小竹さんにも加わってもらってワインを何本か……。

ダイニングルームからみた夕景

ダイニングルームからみた夕景

翌朝、小竹さんは、みちとおとの事業について、すっかり詳しくなっていた。
(なんだか色々としゃべったみたい)
で、「そういうことなら」と、地元の女性たちにご縁をつないでくださった。
高原に伝わるご詠歌も、上手に歌える方がいるらしい。ご詠歌!! (このあたりの祠に記されているご詠歌が、実はずっと気になっている)

ちなみに、祠の庚申さんが光っているのを見たという、那須亀太郎さんはすでに亡くなられたそうだ。残念だが、仕方がない。ご存命の古老に聞いてみよう。

チェックアウトをして別れ際、「サイトにお顔を載せさせてもらっていいでしょか」と小竹さんに聞くと「もちろん、ええで」とポーズをとってくださった。

霧の郷たかはら」のオーナー小竹治安さん.

霧の郷たかはら」のオーナー小竹治安さん 

霧の郷たかはらのホームページはこちら

帰路、高原熊野神社に立ち寄る。
巨木を見上げながら身をひきしめたり、反省したり、腹をくくったりと貴重なひととき。

ちなみにこのあたりの森からは、サヌカイト製のナイフ形石器が出土しているそうだ。縄文時代も、ここで狩猟をしながら山の民は暮らしていたのだなとしばし妄想。

高原熊野神社の巨木

高原熊野神社の巨木

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文:北浦雅子